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先輩インタビュー

​INTERVIEW

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Vol.1

【2021/01/16】

tsugihagi blue
屋村靖子さん、祥太さん

    Iターン    

偶然たどり着いたこの場所には地域がつないできたものがありました。
無理をしないでちゃんと「暮らす」ことから
できること・やりたいことが生まれていくんです。

県外からIターンし、2018年に地元の温泉旅館を引き継いで、家族3人で糸魚川の農村部「木浦地区」に暮らす屋村靖子(おくむら やすこ)さんと祥太(しょうた)さん。テレビ、雑誌や市内のイベントなど、今や様々なところで2人の名前を聞く活動的なご夫婦ですが、現在に至るまでの経緯や思いきった行動の理由にはどんなものがあったのでしょうか。紅葉のきれいな秋晴れの日、2人が営む温泉旅館「ゆとり館」に伺ってお話しを聞きました。

「ちゃんと暮らしたい」東京で感じた、生活と仕事の違和感

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三熊:今日はよろしくお願いします。実は私も今年、新卒で糸魚川に県外から移住したばかりなんです。インタビューも初めてで緊張しています(笑)

 

靖子:そうなんだね!これからよろしくね。

 

三熊:靖子さんは出身が埼玉で仕事は東京でされていたんですね。どうして糸魚川のような都会と離れているところへ来ようと思ったんですか?

 

靖子:東京に居るときは、アウトドアブランドの洋服を宣伝する仕事をしていました。その中で地方にも行く機会があったんですけど、自分がキャンプなどのオンシーズンだけを楽しんでいて、それ以外の大変な時を全然知らないということが「ちょっとださいな」って思うようになったんです。さらに東日本大震災の時に自分は生きる力がないんだなあと実感して、「(自然のあるところで)ちゃんと暮らしたい」と考えるようになりました。移住という言葉も知らないまま拠点や職種を変えようと思って来たので、結果的にそれが糸魚川になったのも偶然なんですよ。ただ、寒い雪国特有の不便さから生まれる知恵に憧れがあったので、雪国がいいなあとは思っていました。

△移住する前の靖子さん

三熊:ご両親や旦那さんへの説明はどうされたのですか?

 

靖子:両親には、「行くからね!」くらいの報告でしたよ(笑)驚かれましたが、説得に苦労した覚えはないです。夫とはもともと結婚する時から「結婚したからって、やりたいことはちゃんとやりたいよね」という話をしていたので、結婚が移住できない理由にはなりませんでした。実際、結婚する前もあともやりたいことをやっていたので。

でも当時、私の方が強気に「ダメって言うなら別れるから!」みたいに言ったらしいです(笑)全然覚えてないんだけど…。実際はダメなんて言われませんでした。そういう人だから私は結婚できたんだろうな。

 

三熊:祥太さんは、靖子さんが「新潟にいく!」と言ってきた時はどう思ったんですか?
 

祥太:最初はびっくりしましたけど、行ってくれば?という軽い感じでした。ちょうどその時に自分が立ち上げメンバーで入った店があって、「仕事をやめられないから別々に暮らすことになるけど、行って来ていいよ」と。まぁ気が向いたら俺も行こうかな、くらいに考えていました。

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△結婚当時のお二人

偶然の出会いでたどり着いた糸魚川

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三熊:拠点を変える際、雪国という条件があったとのことでしたが、どうやって今の地域に住むことになったんですか?

 

靖子:実はもともと大地の芸術祭の手伝いをちょっとしたこともあって、最初の1年間は新潟の津南町に住んでいたんです。知り合いのお家に居候する形で、家が決まってない状態でした。空き家がいっぱいあるよ~と聞いていたものの実際にはなかなか家が決まらなくて…。津南の人にもすごく良くしてもらったんだけど、じゃあ永住する、本当に家を買おうとなった時に、糸魚川の良い家に出合って。糸魚川には知り合いもいなかったけれど、これからきっとできるだろう、という心持ちでした。

 

三熊:家が一番の決め手だったんですね。糸魚川と他の地域の違いなどは感じましたか?

 

靖子:まず、市へ問い合わせた時、何をやればいいかを順序立てて教えてくれたんですよね。じゃあこうすればいいんだな〜ってすぐに道すじが見えた感じ。「移住」って実際は来られた側が戸惑う事の方が多いと思うんです。でも、市の担当者の方が親身に相談にのってくださったので、安心して糸魚川に移り住むことができました。

あとは、たまたまかもしれないけれど、移住者に対して興味を持ってくれる人が多かった気がします。まわりの人が積極的に声をかけてくれたから自己開示できたし、私も入っていこうと努力もできた。海と山の文化が混ざり合っているところもこの地域を選んだ理由かな。

地域にあるものを継ぐ、つなぐ

三熊:現在運営しているゆとり館はいつから引き継いでいるんですか?

 

靖子:ゆとり館は市の施設なんですけど、運営は地域でしていて、しばらく人手不足に悩んでいたんですよね。その状況を知ってできることがあるんじゃないかと思い、「波と母船」という任意団体を興して、2018年から引き継いで運営しています。ゆとり館の状況を知ったのは、実は回覧板。それで興味を持って区長さんに企画書を持っていったのがきっかけでした。

そのあと2020年の2月に、事業拡大と法人の社会的な信頼感を理由に「株式会社tsugihagi blue」を設立しました。誰かの就職先として考えてもらいたいし、「つぎはぎ」していくみたいにこの地域がゆとり館を拠点にまたつながっていくんじゃないかな、という想いを込めて…。ちょっと偉そうですけどね(笑)

 

三熊:そんなことないです!地域で畑もやっていると伺ったんですが、それも活動のひとつなんでしょうか?

 

靖子:そうそう。地域の人に教えてもらいながら始めました。「ぶちゃいく野菜」という名前をつけてときどき販売しています。地域のおじいちゃん、おばあちゃんが作った野菜や梅干しもいただいてゆとり館で売っているんだけど、もともと昔からあった「地産地消」を受け継ぎたいという想いで。ただ、こっちに来て、畑を毎日やるって本当に大変なことだというのが分かりました。辞めてしまう人がいるのも仕方がないと思うし、だからこそずっとこの小さい集落がゆとり館を20年以上守ってきたってことが、地域としてすごく魅力的だしすごい底力があるよなあ、とまだまだ可能性を感じています。

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三熊:祥太さんはこちらにどんな経緯で来たんですか?

 

祥太:仕事を辞めたので、先に来ていた靖子のところ行ってみようかなって(笑)

俺は「ここにずっといる」とかをあまり強く決めたくない性格で…。たまたまこっちに来たタイミングでゆとり館の仕事を靖子が始めるところだったので、手伝うことになったんです。全然志なんかゼロですよ(笑)でも、いまはゆとり館でごはんを出したりもしているので、飲食の仕事をしていたのが、結果的にとても役に立っています。

 

靖子:とか言って、私よりここの暮らしになじんでるよね(笑)

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△バルの仕事をしていた祥太さん(左)

地域での生活のヒントは「気楽さ」

三熊:私自身もある地域に入ったばかりで色々教えてもらいながらも「何ができるんだろう」と悩んだりしていて…。よそ者が地域に入るうえで心がけてきたこととかありますか?

 

靖子:うーん、基本的に「気楽に気長に」に接することだと思う。例えば暮らしているとそこらじゅうで物々交換が行われていて、おすそわけをもらうと「なにか返さなきゃ!」と思いがち。だけど、「うれしい!ありがとう!」って気持ちを伝えれば充分なんじゃないかな。「こんなに喜んでくれる」っていうだけでもきっと嬉しいし、活力になるから。

だから、代わりになるかわからないけど重い物あったら「持ちますか?」とか、「今度これやるので来ませんか?」とか「お茶飲みしませんか?」とか。そんなことで全然いいんだと思ってるよ。最近。

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三熊:なるほど…!とても大事ですね。

 

靖子:あと自分が大事にしてることは、「頼る」ことかな。本当は自分一人でできちゃうようなことも、一度相談するっていうのを大事にしています。一人でやってできちゃった時のほうが後味悪いこともありました。みんなでやろうとすると、時間はかかるんだけどね。でもそっちの方が先の長い良い関係性を築いていける気がするから。

 

三熊:祥太さんは2年ほど暮らす中で、こちらの生活のどんなところが良いと思いましたか?

 

祥太:「自分のスペースが広い」ところですね。部屋も家もそうだし、歩く道も、東京みたいに大勢の人とすれ違うこともない。東京にいるときはそれが特にストレスって思ってなかったんですけど、こっちに来て暮らしてみて、「狭い部屋にいること自体がけっこうしんどかったのかも」と気がつきましたね。

それは実際に来てみないと分からない感覚でした。あ、あと畑も野菜に愛着がわいて、とても楽しいです。辛いところは、飲み屋まで車で行かないとだから、気軽には飲みに行けないことかな(笑)

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「無理しない」暮らしを外から来る人に届けたい

三熊:最後に、これからやってみたいことを教えてください。

 

靖子:この地域での「暮らし」や「遊び」を「売る」ことかな。暮らしと遊び、セットでこのゆとり館が成り立てばいいなと思っています。

 

三熊:というと…?

 

靖子:無理をして一時的なおもてなしするわけじゃなく、私たち夫婦やここで暮らす人たちが普段から楽しくてやっているようなことを「一緒にやりませんか?」って友達を増やしていく感じにしたいです。

 

普段はしない一時的なおもてなしだと、疲れるじゃないですか(笑)そうじゃなくて本当にしている暮らしの一部を体験してもらえたらいいなと思っていて。例えば、私たちが「この週末、梅干し漬ける予定だったな」となったら「梅干し漬けたい人いませんか?」と呼びかけてみたいな。自分たちが気を張って疲れてしまったら、移り住んできた意味がなくなっちゃうから。外から移住してきて、また地域を離れてしまう人もいるけど、それって人との距離感とか、ちょっとしたことの積み重ねだと思っています。そんな少しのズレを移住する前にゆとり館での体験を通してなくしてもらって、この地域を好きになってもらえたら嬉しいな。

 

三熊:とっても素敵ですね!ここが入り口やきっかけになる人も増えそうで、心強いです。

長いインタビューに答えていただき、ありがとうございました!

インタビュアー  三熊 愛さんからのひとこと

インタビュアーとしての初仕事。緊張しながら初めてお会いした屋村夫妻は自分の考えを持って楽しみながら一歩一歩を踏みしめている印象で、私の理想の、その先を歩んでいるような二人でした。私はいつも「これを言ったら周りにどんな目で見られてしまうのか」と考えてしまうけれど、靖子さんと話していると、自分のペースで、自分の意思で今を生きることがどれだけ大切なことなのか感じずにはいられませんでした。

お二人がとても素敵な笑顔でこれまでのことを語ってくれる様子を見て、「それぞれが理想の幸せの姿を持っていられるように、私は私の幸せのために行動しよう。」そう感じた素敵な時間でした。ありがとうございました。

​インタビュアー紹介

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​三熊 愛(みくま あい)

​北海道札幌市出身、京都芸術大学卒業。2020年10月より糸魚川市地域おこし協力隊として移住。​現在は協力隊として活動しながら、面打ち師になるため京都で能面を彫る修行中。最近木彫教室始めました!

​長者温泉ゆとり館

所在地:糸魚川市木浦18778

営業時間:9:00開館(入浴10:00)~21:00(冬季20:00)

定休日:毎月第4水曜日  HP:https://yutorikan-onsen.webnode.jp/

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