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先輩インタビュー

​INTERVIEW

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Vol.3

【2021/08/06】

    Iターン    

三熊愛さん
わたしのままで、地域を残す

―「異物感でありたい」

そう強く言葉にした三熊愛さんは、2020年10月から糸魚川市小滝地区で地域おこし協力隊として活動する地区唯一の隊員です。

生まれ育った北海道、学生時代を過ごした京都を経て飛び込んだ場所は、糸魚川の中でも豪雪地、90世帯が暮らす小さな山あいの地区。あえて「地域に溶け込みすぎない」ことを選択する彼女は、繊細さと強さの両面を兼ね備え、地域との関わり方を新しい視点で捉えながら奮闘しています。

本がきっかけで「山で生きる」にあこがれ、糸魚川へ

靖子:三熊ちゃんは、札幌出身で京都の大学を卒業しているんだよね?

三熊:そうなんです、京都造形芸術大学を出てから北海道に戻る考えはなくて。地元に帰ると無意識に甘えちゃう気がして、新しいまちでやってみたい!と思っていました。

靖子:うんうん、わかる気するなぁ。なんで糸魚川だったんだろう?

三熊:山菜の採り方や採ったあとの保存方法、狩猟、マタギの世界とか、ざっくりいうと山で生きる術みたいなものを自分に取り入れたいと思っていたんです。「仙人」的な人に憧れたというか…

靖子:そんなことってある?(笑)

三熊:そうですよね(笑)映画もですけど、きっかけになったのがクロニクルシリーズの「オオカミ族の少年」という本。この本が私にこの気持ちを抱かせてくれたような気がします。

靖子:そこから、どうして小滝地区の地域おこし協力隊に?

三熊:山菜や狩猟ってなかなか仕事にはできないのですが、地域おこし協力隊なら何かヒントがあるかと思って、JOIN(移住・交流推進機構)地域おこし協力隊ポータルサイトで、「山菜」や「狩猟」で検索したんです。そしたら、糸魚川市小滝地区の地域おこし協力隊の募集要項がヒットして。地区内にある古民家「鈴鹿邸」が古い建物にも関わらず、きれいに改築されていたり、地域活動の拠点になっていたりして、古いものと新しい動きが融合されている気がして興味を持つようになりました。

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靖子:めっちゃいいね!それで、すぐに応募したの?

三熊:まずは市のインターンシップ制度を使って、冬に3週間移住体験をしました。猪の解体やもちつきなどを手伝って集落の人と関わらせてもらって。その時に初めて今活動している小滝地区に来て、小滝の人たちの「地域を次世代に残そう」という思いを知ることができました。京都でも大学の延長でやりたいことがあったんですけど、「今は小滝に行った方がいいな」って思ったんです。私が必要とされているのもそうですし、小滝の人たちが「動ける」のは、思いの強さ的にも、「今」なんだろうって。だからこの地で地域おこし協力隊として働いてみようと決めました。

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糸魚川での1年。地域との関わり方

靖子:移住してからちょうど1年くらいだよね。どう?やりたかったことはできている?

三熊:個人的に抱いていたことにはまだまだ到達していなくて…私が活動しているのは、小滝生産森林組合という森林を保有・管理したり山菜やナメコの事業を行ったりしている法人組合で、地域おこし協力隊の募集内容も山菜の販売や商品開発、土地や売店の活用などでした。実際にはそれだけでなく、ツリーハウスをつくるために企画書を書いたりクラウドファンディングをしたりしています。今度山菜でつくった「こごみキムチ」も販売するんですよ。

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※ツリーハウス事業・・・地区内にある土地に子どもの頃に夢見た秘密基地のような遊び場をつくる事業。

靖子:そうなんだ、やりたいことをやるってどんな場所でも内容でも大変なことだと思うけど、この場所に来て大切にしていることってあるのかな?

三熊:フッカルでいることくらいですかね。

靖子:ふ?フッカ?

三熊:あ、すみません。フットワークを軽くという意味です。

靖子:そうだよね、10歳下だもんなぁ(笑)。どうしてフットワークを軽くいようと思っているの?

三熊:内容がわかっていないのに断るのは、可能性をつぶしちゃうんじゃないかなと思っていて。まずは行ってみて知った上で、改めてどうするか考えればいいと思うんですよね。

靖子:そうなんだね。あと、三熊ちゃんを見ていて不思議だなぁ、すごいなぁと思うのは、企業への就職だけじゃない、たくさんの選択肢がある世代の三熊ちゃんが「どうしてこの選択をしたんだろう」ということ。大学を卒業するときどう考えたの?

三熊:芸術大学に通っていたころ、私はひとりで作品をつくる作家ではなく、だれかと一緒に動きながら生み出す(アウトプット)方が合っていると思いました。だから今ここでちゃんと地域と一緒に活動することができれば自分の夢にもつながると思っています。

靖子:自分の夢?

三熊:将来的には自分の拠点を2つ持ちたいんです。2拠点ってどちらかが別荘的な存在なことも多いと思うんですけど、私はどちらにも本気で関わる「本拠地」のようなイメージ。任務が終わっても小滝地区とはずっと「交流人口」な存在でありたいと思っています。

靖子:うんうん、なるほどね。その考えを持てて、さらに実現できるとなったらとてもいいね。でも、現実的にはどちらの拠点からも取り合いみたいになりそうだけど、どうしたら2拠点同じ関わり方を続けられるんだろう?

三熊:この地域って私みたいな若い担い手の「代え」がきかないと感じていて。これはメリットでもありデメリットでもあるのかなと。「代え」がきかないことがやりがいにはなると思うんですけど、私や今中心になって進めている方がいなくなったら止まってしまうプロジェクトばかりになってしまって。続かせることが大切なプロジェクトだとしたらそれはもうデメリットでしかない。本当は誰でもできるような「仕組み作り」ができたらなって思っています。

靖子:「代え」がいないと思ってもらえるって、うらやましい響きな気もするけど、小さなまちの課題もあるよね。「継ぐ(継続させる)人」「継がせる(託す)人」どちらも勇気がいることだし、意外とできないんだよなぁ。

三熊:そうなんですよね…ただ、今一緒にやってる方たちが、私ぐらいの年齢のときから「小滝にはまだまだ可能性がある」と考えて活動してきたのですごく心強く思っています。これまでも新しい人を呼ぼうとしたり、新しい人に寄り添ってくれる人たち。だからこそ私のことも受け入れてくれています。お互い本気なのでけっこうぶつかることもありますけどね(笑)

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流されないための「自分」と心強い先輩たち

靖子:ぶつかれるってすごいね、「郷に入っては郷に従え」的な感じでなんとか溶け込もうとしちゃう人も多いと思うけど…

三熊:ちゃんと「異物感」でいたいなって思うんです。人間関係が深まるのは良いことなんですけど、本当に大事なことを言えなくなったり流されたりしたくはなくて。コミュニティとの距離が近くなりすぎると自分自身の考えまで染まってしまいがちなんですけど、自分の意思みたいな部分はちゃんと残したいと思っています。そのためにプライベートと仕事は分けるようにしています。私には「距離感」が必要。だから今はあえて街中に住んでいます。

靖子:私が移住者っていうのもあるかもしれないけど、すごく新しい考えだと思う。勇気もいるし、労力も必要。でもこれからは、まちとしてもそういう考えも尊重していかなければいけないのかもね。

三熊:そうなんですよね。でも糸魚川ってそういう人はすでに多い気がします。移住体験時にサポートしてくれた「まちづくりらぼ」の皆さんもそうでしたけど、まちのことを考えて自分の芯をもって動いてる人たちがたくさんいて、単純に「すごいな」って思える先輩がいることは心強かったです。

靖子:そこに三熊ちゃんの武器の「フッカル」がプラスされてどんどん良い方向に進んでいってるんだね。

三熊:まちの人たちの思いが熱々な「今」この時期に来れてよかったって本当に思います。私がいるからこそできることをがんばるしかないなって思っています。

靖子:すごいなぁ。三熊ちゃんの友達にはこの暮らしはどう見えているんだろう?

三熊:安易にはおすすめはしないです(笑)こういうところでの暮らしって、受け入れる地域側によって全然違ったものになるから。だからこそ3週間移住体験ができて、小滝地区の方々の受け入れようとする熱、まちを思う人たちの熱を事前に知れたことはとてもプラスになりました。「事前に」知ることがとても大切だと思います。

靖子:なるほど、小滝地区は事前に体験できたことがきっかけだったんだね。いやーまだまだ聞きたいことばかり、また小滝に遊びに来ます!

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インタビュアー 屋村 靖子さんからのひとこと

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彼女に初めて会ったのは第1回目の「わたしのいと」で私たちをインタビューしてくれた時でした。今回は逆インタビュー!ということで、たくさんお話させてもらいましたが、最初に感じたどこか危なっかしいような、儚い印象、それももちろんありつつ、話をすればするほど、芯は強く、とても魅力的で私たち世代にはない感覚を持つ方でした。

小さなまち、組織の中で「異物感でいる」ことがどれほど勇気がいることだろう、それと同時にどれほど大切なことだろうと感じます。彼女がまちにとって異物感でなくなったときにモノゴト(まち)が動き出す、そんな期待感を持たずにはいられません。彼女のような存在を潰さず支えていくことが私たちの役割なんだと今回お話をさせてもらい改めて感じました。

補足:地域おこし協力隊とは・・・人口減少や高齢化などが進む地域において、地域住民と共に地域協力活動を行い、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度(総務省「地域おこし協力隊」ホームページ(外部リンク)へ)

わたしのいと「先輩インタビュー」は随時記事をアップしていきます。

次回は12ころを予定していますのでお楽しみに!​