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先輩インタビュー

​INTERVIEW

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Vol.4

【2021/12/27】

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    Uターン    

横井藍さん
離れてから糸魚川の豊かさに気づいたわたしが、今故郷でできること

糸魚川市下早川地区にある農家の長女として誕生した横井藍さん。高校卒業後一度地元を離れ茨城県へ進学した彼女は、その後茨城県内の農業法人へ就職します。4年間そこで事務や販売の業務を行ったのち、2016年に環境の変化を求めて糸魚川へUターン。今は実家の株式会社清耕園ファームを支えるかたわら、糸魚川で人とのつながりを広げながら、食のイベントを開催するなど糸魚川に欠かせない若いキーパーソンの1人となっています。

農業って作るだけじゃない!を知った茨城での経験

川合:今日はよろしくお願いします。日頃からお世話になっているので変な感じですが、ちゃんとお話しを聞けるのが楽しみです!藍ちゃんはUターン組なんだよね?

 

横井:はい。糸魚川の下早川地区にある農家の三姉妹の長女に生まれて、中高生時代は吹奏楽の部活に打ち込み、その後茨城県の農業専門学校へ進学しました。当時は夢なんて特に何もなく、糸魚川に居続けるのが嫌で、とりあえずどこでもいいから糸魚川を出たいというのが進路選択の第一条件でした。

 

川合:なるほど~。進学先に農業の学校を選んだのは将来のことを考えて?

 

横井:それも結構適当で。(笑)両親に跡を継ぎなさいって言われたことは一回もなかったし、農業がやりたいと強く思っていたわけではないんだけど、たぶん嫌ではなかったんだろうな。他にやりたいこともなかったし、なんとなく選んだ感じです。

 

横井:就職は、農業の企業説明フェアにたまたま行ったときに、貰ったパンフレットに観光農業について書かれている会社に目が留まって。「人と関われそう」と思って、見学を希望したのがきっかけでその会社に決めました。

 

川合:へー!そこではどんな仕事をしてたの?

 

横井:事務とか販売とかですね。電話をとったり発送したり、お客さんの対応をしたり。

食育イベントも積極的に行われていて、あ、農業って作るだけじゃないんだ、ってそこで初めて知ったんです。それがすごく自分に合っていて、楽しかったんですよね。

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川合:いい会社に出会ったんだねー。その後はどうして地元に戻ろうと思ったの?

 

横井:4年勤めたころ、会社でたまたま、同期が辞めたり産休に入る人がいたり・・・というタイミングが重なって、後輩まで入ってきた時に、とても忙しくてそれだけで精一杯になっちゃって。人と関わるのが楽しくてこの会社の良さを感じていたのに、気がついたら楽しみながらの対応ができなくなってきちゃったんです・・・それに気づいたときに「環境を変えなきゃ!」って思いましたね。

農業が嫌なわけではないし、全く新しいことにチャレンジしようみたいなやる気も特になくて。まあじゃあ、帰るか、って。(笑)

 

川合:なるほど~仕事の環境を変えたい!というのが糸魚川に帰るきっかけになったんだね。

離れてから気づいた糸魚川の豊かさ

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川合:糸魚川に帰ってきて家族は喜びましたか?

 

横井:どうですかねー。妹たちも進学を考えている状況で、母は大変そうだったからなあ。

でも、6年茨城にいて、自分自身も変わったり家族の状況が変わったりして、糸魚川にいるのが嫌!みたいな気持ちはちょっと薄れてたかもしれないです。一度出たからこそ良さに気づいたのもあるかな。山がキレイとか。海が近いからお魚が美味しいとか!

 

川合:たしかに。当たり前にあると何も感じないけど、ないと初めて気づくことってあるよね。

糸魚川に戻ってきて、最初はどこか仕事を探したりとかしたの?

 

横井:全然探さなかった!たぶん両親も、「帰る=家に入る」ってことだと思っていたんだと思う。仕事どうするの?とか何も言われなくて、「お帰りー!じゃあ明日から(農業の)仕事よろしく!」っていう自然な流れでした。(笑)

 

川合:なるほどー!藍ちゃんも決意して帰ってきた!っていうわけでもなく、家族も跡を継げ!って言葉にするでもなく、お互い自然な流れでまとまったんだね。農園ではどんな仕事をしているの?

 

横井:私が帰ってきて農園でちょうどやり始めたのがぶどうといちじく。農園全体ではお米をメインにやっているのと、メロンも25年くらいやっています。お米を育苗したあとのハウスが空くので、その場所を活かしたくて始めたのが果樹なんです。

 

川合:お世話ってどんなことをするの?水やりとか?

 

横井:春、ハウスにお米の苗が並んでいるときにハウスの骨組みに沿うような感じで植えたぶどうが芽吹き葉っぱが生い茂ってきます。田植えが終わってお米の苗がハウスの外に出て行った6月から、ぶどうの管理作業が始まる感じです。

 

川合:へえ!たしかに場所が活かされているね。いちじくはどんな感じ?

 

横井:黒いコンテナにいちじくを植えるんですが、毎年収穫が終わると翌年の芽を残して切ってしまうんですよね。それで、次の年の6月くらいに芽が出てくるので良い芽を残して育てて実をつけるって感じです。いちじくはそんなに手がかからないっちゃかからないかな。ただ、収穫が始まると毎日収穫。それはそれで大変だけどね〜ただ、ぶどうは逆に管理が大変で。

 

川合:ぶどうはどんなところが大変なの?

 

横井:良い実を選んでそれ以外は落としたりとか、実に光が行くように葉っぱが生い茂りすぎないようにしたりとか・・・結構時間をかけて作っています。

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Uターンしてから出会った同世代たち

川合:Uターンして良かったことってある?

 

横井:糸魚川の若い人たちと関わりを持てたことが良かったですね。糸魚川に帰って来た年に、糸魚川市駅北大火(2016年12月に起きた100棟以上が全焼した大規模火災)があったんです。駅前の広場で復興のイルミネーションをやるから仲間になってくれって誘われて、まちづくりらぼ(UIターン者が集まって立ち上げた市民団体)の活動に関わるようになりました。それまでの一年は同世代との繋がりがなかったので、自分の居場所ができたな、という気持ちでした。部活みたいで毎日とても楽しくて、人間関係も広がりましたね。学生時代は関わりがなかった人と帰ってきてから関わりを持てたりしました。

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当時のまちづくりらぼメンバー

川合:(旦那さんの)みっちゃんともその時出会ったの?

 

横井:彼は私より半年前くらいに、飲食店を始めたくてUターンしていたんです。実は高校のクラスも一緒だったんですけど、帰ってくるまで全然関わりがなくて。「地元の野菜を使った料理を作りたいから協力してもらえないか」と連絡をもらって、再会しました。友達の延長線上みたいな感じかなあ。でもたぶんやりたいことが一緒だったのが大きいと思います。

 

川合:やりたいことっていうのは?

 

横井:旦那さんはもともと糸魚川が好きなタイプで。地元に帰ってきて地元のものを使って、糸魚川の畑の真ん中に店を出すという夢を持って東京から帰ってきたんですよね。それを一緒にやるのは面白そうだなーって私も思っています。今は糸魚川市駅北広場キターレ(ホール、エントランス、キッチンからなる市民の交流広場)の中でお店をやってるんだけど、これから準備して早川の田んぼの真ん中にレストランを建てたいね!と計画しています。

 

川合:すごく素敵な場所になりそう!それはとっても楽しみ!!!

自分がここでできることを続けたい

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川合:そういえば、藍ちゃんが書いている手書きの農園だよりが好きでよく見てるんだけど、あれすごくいいよね。でも、毎回書くのって大変じゃない?

 

横井:農園だよりはB5サイズの紙に農園の様子を伝える写真と文章を載せて、コピーして配ったり品物の発送に同封したりしてるんですけど、それも前の会社で社長の奥さんがずっとやっていたのを見ていたんです。すごくいいなーと思って、帰ってきて一年間まずは毎日SNSの更新をし続けよう、とSNSを始めました。でも昔から買ってくれてるお客さんがどんどん高齢化していっているので、ネットでは伝わらない情報があるんですよね。そういう人にも届くようにやっぱり手書きでも書こう!とやり始めて、毎月続けています。

 

川合:毎月って、すごいねー!

 

横井:楽しみにしているよ、って言ってくれる人もたくさんいて、これは続けなきゃと思っています。

 

川合:お手紙みたいだね。素敵!

川合:つなぐキッチンプロジェクト(糸魚川の食や農を体験するイベント)も、そういう同世代のつながりから生まれたの?

 

横井:つなぐキッチンプロジェクトは、『いといがわ復興情報誌ホープ』でUターンした若者としてインタビューしてもらったのがきっかけで始まりました。前の会社で食育のイベントをやっていたので、それを糸魚川でもやりたいと思っていたんです。だけど一人だとなかなかできないなあと思っていたところ、同じインタビューを受けていた他の2人と話す中で、やってみよう!ということになりました。

 

川合:そうなんだね!Uターンした時から農業とか地域のことを発信したいという気持ちがあったの?

 

横井:そうですね、その気持ちは帰ってきた時にはすでにありました。誰もまだ糸魚川でやってないことをやりたいなあって。「自分ができること」かつ「自分が楽しいこと」って何だろうって考えたときに、前の会社の経験を思い出したんです。子どもが好きで子どもたちに関わりたい気持ちもあって・・・このインタビューをきっかけに企画や告知できるメンバーが揃ったので始めることができました。つなぐキッチンプロジェクトとして、今は年に二回くらい、ジャガイモ掘りとサツマイモ掘りをやってます。糸魚川市内の未就学児のお子さん親御さんの参加が多いですね。

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インタビューきっかけで出会ったつなぐキッチンプロジェクトメンバー

何かしなきゃいけないって思わなくていい

川合:まちづくりらぼがきっかけで人間関係が広がってきたってお話があったと思うんですけど、まだつながりがなくて仲間と知り合いたい人に向けたアドバイスってありますか?

 

横井:うーん、そうだな。「何かしなきゃいけない」って思わなくていいってことかなあ。何かしらの活動をしている人が目立って見えるけれど、別にそれだけが正解じゃなくて、こっちに帰ってきてちゃんと暮らしているだけでもきっと充分なんですよね。イベントに集まってくれる人って、関わりを持ちたいと思って参加してくれているしそもそも社交的だったりするわけで、なかなか出てこれない人に無理に出てきてっていうのもちょっと違うなーって。

 

川合:そうか、そうだね。これから糸魚川にUターンを考えてる人に向けてメッセージとかありますか?

 

横井:みんな仕事がないって言いますよね。関東では成立してる仕事でもこっちだと稼ぎにならなかったりとか・・・。仕事面はわからないけれど、Uターンして何か関わりやつながりを持ちたいって思った時に、つなぐキッチンプロジェクトとかまちづくりらぼが、ひとつの入口になったらいいなあと思っています。

 

川合:たしかに!参加者としてでも来てくれたらそれで出会えてまた何かにつながったりとかするよね。

 

横井:観光案内はいっぱいあるんだけどね・・・、そうじゃなくて移住とかUターンとかしたいときに相談できる人がいるといいよね。あと、糸魚川の子どもたちには「糸魚川から出るな」ではなくて、一度出てみるのは良いよ!と伝えたいですね。

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インタビュアー 川合真生(孫平books&flowers)からのひとこと

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実はこのインタビューの前日に、つなぐキッチンプロジェクトのサツマイモ掘りのイベントで、サツマイモのツルを土台にしたリース作りをみんなに教えてほしい!と藍ちゃんに声をかけてもらい、私は講師として参加してきました。イベントでは初めましての方が何人もいて、食育イベントでまさに人と人とが繋がった!と感じました。
「人との繋がりができて、居場所ができたと思えた。」というところにとても共感したので、糸魚川でそう思える人がどんどん増えていったらいいなあと思います。

株式会社清耕園ファーム 公式HPはこちら
https://seikouen.sakura.ne.jp/